教皇フランシスコ回勅『ラウダート・シ、主に賛美、Laudato si'』(邦訳つづく、3章113-114番)

一歩とどまって、人生の深みの次元を取り戻そう

113. 人々がもはや幸せな将来を信じないようです。人びとは、もはや盲目的により楽しい明日を現在の世界の状況やその技術的な能力から期待できないと思っている時が多いです。人類と歴史の発展はかならずしも科学技術の進展と同一視することができないと人が気づき、幸せな未来への道は別な方向で見出さなければならないとわかってきています。

それと同時に、そうかと言って、テクノロジーが提供する可能性を拒否するわけにはいかないのです。人類は大きく変革しました。激しい速度で付け加えられる変化は我々を唯一の方向へ流させようとします。

そこで、休止して、人生における深みの次元を回復することは、難しくなります。

建築が時代の精神を表すならば、我々の巨大高層ビルと単調なアパート・ブロックは国際化されたテクノロジーの精神を表していると言えましょう。そこで、新製品のたえざる登場は生活の退屈と共存しております。しかしそれはしかたがないといってあきらめたくはありません。

全体の意味を問い続けて目標のために問いかけることをやめないようにしましょう。そうでなければ、現状維持の態度で現在の状況を正当化してしまうことになり、空しさを避けるために似非の物をもとめつづけることになってしまうでしょう。

114. 今起こっているこれらのことをみている我々は文化的な大きな変革の必要性を感じます。科学とテクノロジーはけっして中立ではありません。

プロセスの最初から終わりまで、いろいろな意図と可能性を含むことができて、種々の形態を帯びることができます。誰も石器時代への復帰を提案してはいません。

しかし、欠かせないのは速度を減らし、別な目で現実を見つめ、ポジティブで持続可能な進展を生かし、我々に大切な価値と目標を失わせた無制限の大妄想をやめることです。