死刑廃止を求めて

2010年7月29日

内閣総理大臣 菅 直人殿

  法務大臣 千葉景子殿

                 日本カトリック正義と平和協議会

                 死刑廃止を求める部会

                 部会長 ホアン・マシア

7月28日の死刑執行に抗議します

 日本カトリック正義と平和協議会死刑廃止を求める部会は、7月28日の篠沢一男さん(東京拘置所)、尾形英紀さん(東京拘置所)に対する死刑執行に強く抗議します。

 前回の死刑執行は2009年7月28日で、それ以前に行われていた定期的な死刑執行はこの一年間停止されていました。私たちは、千葉景子法務大臣の元で新たにいのちが奪われたことに、深い悲しみと憤りをおぼえます。

千葉景子法務大臣、あなたは2009年9月の就任以来、死刑について国民的議論の場を設けることを念頭に置き、死刑に関する情報公開に取り組む旨、発言してこられました。弁護士でもあるあなたが、長年、死刑廃止に積極的に取り組んで来られたことは、よく承知しています。それだけに、私たちは、今回の一年ぶりの死刑執行に対して、信じられない思いを禁じ得ません。

あなたが自ら死刑に立ち会い、刑場の公開や死刑に関する勉強会の立ち上げを示唆したことは、評価すべきです。しかし、議論が尽くされ、死刑が廃止されるまでに、どれほどの命が奪われなければならないのでしょうか。何よりもまず死刑の執行を停止すべきなのです。

私たちは重ねて、死刑執行の即時停止を強く要請いたします。特に最近の判決では、被害者感情を考慮するあまりに「死には死をもって報いる」といった「死刑判決」が増えてきています。

死刑は暴力的メッセージを発するだけで、犯罪の抑止にはつながりませんし、死刑では何も解決できないからです。

 この死刑という刑罰は、いのちを軽く扱いどんな人も変わり得ることができるという可能性を閉ざし、あきらめを生み、希望の芽を摘むものです。日本カトリック司教団は、『いのちへのまなざし』(2001年)でこう述べています。「創世記の、弟を殺したカイン追放の場面にある、神が、『カインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた』(創世記4・15)という文章は注目すべきです。そこから、わたしたちは、死刑を否定するメッセージを読み取ることができます。そのしるしは、犯した罪の行為に対する反省をカインに促すものでもあり、どんな醜い罪を犯しても、人間に最後まで生きる可能性を与えようとする神の愛によるものです。実に、生への道が開かれていてこそ、悔い改めの可能性が開かれてくるのです。」(69)

また私たちは、第一に考えるべき被害者とその家族の本当の癒しに関するプログラムが、日本にはないということも死刑制度に伴う大きな問題と考えています。加害者は犯罪に対する償いはしなければなりませんが、「加害者のいのちも奪わない」ことによって、いのちがどれほど大切であるかを明らかにすることができるのです。私たちは、加害者のいのちを死刑によって終わらせるのではなく、償いという行いによって加害者が改心し、希望を持った人に変ることを望んでいるのです。

私たちは、日本政府がただちに死刑執行を停止し、死刑廃止を真剣に検討して、真のゆるしと成熟した国家への道を歩みはじめるよう、強く求めます。

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