過剰医療打ち切り(つづく)


 場合によっては治療停止と延命中止の判断を下さなければならない。そのとき、前回述べたように、生命の尊さを念頭におきながら健康状態の質と回復の見込みに関する予後(prognosis)を考慮に入れたうえで、患者を一番大切にすることとつながる決定を責任をもって行う。患者が前もってその意思を表しておいたとすればなおさらのことであるが、そうでなければ、患者にかわって一番患者の立場に立ちうる者(大抵身内の者)が代わりに判断する。

 しかし、残念ながらこのような判断の仕方をせずに責任のがれをする傾向は強い。人は法的な規定や技術的な規定に頼りがちで、人間的な判断を行うのはなかなか難しい。理想的にはこの決定は規則によってではなく、患者の身内の者と医療関係者との協力と信頼関係の中で行われるのが望ましい。

 ただそれは実際には難しい。機械がある以上使わなければならないという考え方の影響もあって、また付けた以上はずせないという考え方も強いものである。それに加え、後に訴えられたら困るから無難な道として過剰医療を使ってしまうことが残念ながらよくある。そして、これは医療側だけでなく、身内の側からの責任のがれの傾向と重なってしまうこともある。そのような場合、やってあげられることをすべてやったという安心感と自己満足が患者の尊厳を傷づけることにもなりかねない。