「死刑を止めよ」宗教者ネットワーク

法務大臣 森 英介 殿

「死刑を止めよう」宗教者ネットワークは、佐藤哲也さん(旧姓野村、名古屋拘置所)、川村幸也さん(名古屋拘置所)、西本正二郎さん(32歳、東京拘置所)、牧野正さん(58歳、福岡拘置所)に対する死刑執行に強く抗議します。

 私たち「死刑を止めよう」宗教者ネットワークは、本日、佐藤哲也さん(旧姓野村、名古屋拘置所)、川村幸也さん(名古屋拘置所)、西本正二郎さん(32歳、東京拘置所)、牧野正さん(58歳、福岡拘置所)に死刑が執行されたことに強く抗議します。昨年は1年間で5回、合計15人に死刑が執行されました。このように定期的・複数名の執行を続ける政府・法務省の姿勢に、裁判員制度の導入を控え、死刑執行を当たり前のことと印象づけようという政府・法務省の意図を感じます。このまま裁判員制度が導入されれば、市民が死刑判決の増加に加担させられる事態になりかねないことを、深く憂慮します。私たちは、人の死がこのように政治的に扱われることに深い悲しみと怒りを覚え、死刑執行の即時停止を強く要請いたします。

 「死をもって償うしかない罪がある」と言われます。しかし、死によって罪が償われることはありません。罪を犯した人を処刑しても、その人を罪に至らしめた社会や人間関係の歪みが解明され、解決されたことにはならないのです。そして何より、被害者遺族に十分な支援の手を差し伸べないで、加害者を処刑して幕引きとするのは、一刻も早く安全が回復したと思いこみたい、私たちの願望の反映に他なりません。しかし、人の命を奪うことで、安全な社会が実現されることはありません。罪とその被害、そして罪を生み出した背景と正面から向き合うことでしか、安全な社会は実現されないのです。

 人には誰しも加害者と被害者の側面があります。絶対に正しい人などいないように、生まれつき心底からの悪人もいません。人をよい方向に導くのも、悪に誘うのも、人とのかかわりあいです。しかし、現代社会は、弱い者を切り捨て強い者だけが生き残る社会、自分を攻撃する者に暴力をふるうことが正義とされる社会です。このような社会のあり方を変えないかぎり、暴力の連鎖は終わることなく、犯罪の悲劇は続くことでしょう。私たちは一人ひとりの命の尊厳を大切にし、人と人との関係を変えていくことで、犯罪抑止への道を歩みたいと思います。死刑の執行停止はその第一歩なのです。
私たちは宗教者の立場から、力ではなく善意によって罪を克服し、どんな人の命も大切にする社会の実現を目指して、死刑執行の即時停止と死刑制度の廃止を訴えつづけます。

2009年1月29日

「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク